――舞台は移り変わる
――アザナがいる世界とて、人々は当たり前のように日常を過ごす
――ひとつめの舞台は、何でもない、普通の高校へと


「ってわけで、今回はイケメンマップを作って遊びにいく女子旅企画をしようって意見を出したの!!」

生徒会会長の御劔江苗(みつるぎ えびょう)は、そんなふざけたことをのたまいながら、セーラー服を翻した

「そしたら梨里恵ちゃんが、えーと、なんだっけ」
「相変わらず頭が沸いてるとしか思えない発言ですね、ですよ」
「って言い出してさぁ!!ひどくない!?」

その横、生徒会役員である無芸梨里恵(むげい りりえ)が、質量のあるわさわさとした髪を動かしながら、無表情で答えた


「………アタシもちょっとどうかと思うわ」
口元を衣服で隠し、常に眉を潜めながら無愛想に応える赤紫キミドリ(あかむらさき きみどり)
鞄から弁当を取り出すと、さっさと離れようとする
「じゃ、アタシ屋上行くから」
ちらりと三白眼を向けたあと、淡々と告げて教室を出ていく


「えー、つめたーい!!」
「赤紫さん、いってらっしゃい」
ぶう、とおこる生徒会長は、横で普通に別れを告げる梨里恵に
「梨里恵ちゃんもつめたーい!!もういいもーん」
むすっと機嫌を損ねると、昼寝しようと――



「、……」

屋上、

壁に何かの機械が付けられている
"10:00"のタイムリミットが記されている、ドラマなんかでよく見かけるような

"爆弾


眉間の皺を深くさせながら、刻々と時刻が減っていくそれを観察する

「…これ、マジ物かな。アタシがどうこうする問題じゃ、」
爆弾の処理方法なんて知らない。冷静に見ながらも静かに動揺して、数秒黙っていたが
「…仕方ないな、」
刻んでいる時は既に残り少ない――彼女は万が一を危惧し、一度も学校で見せなかった能力を発動させる。
手から灰色のインクのようなものが溢れ、コンクリートに水たまりのように広がって落ちると、そこに"飛び込んだ"
そして、教室の――自分の席の下から飛び出して来た。
「江苗、屋上に爆弾あった、」
焦っているはずなのに声色声量はいつもとあまり変わらない。寝てる会長の肩を乱暴めに叩く


唐突に現れた彼女に、「ふぁ!?」とよだれを垂らして起き上がる
「ええ?……ふぁ、なーにそれ、キミドリちゃん冗談上手くなったねえ」
彼女が起き、ふぁあ、と欠伸をしながら「ていうかいつの間に来たの?」と言ってた
「爆弾?……屋上のどこ?」
とりあえず起きると着いていくことに
ひやり、と冷気を纏うと、梨里恵に「いってくるー」と伝えて
「時間ないんだよ、こっち」
教室から出ようとする彼女の腕を強引に引っ張って、自分の席の下の床――先程自分の手から出現した色と同じような色の床に、飛び込んだ

「えっ、キミドリちゃんそんな能rあああああ!!!!!!!!!!!!!」
飛び込んで気の抜けるような驚きの声を挙げていたが、

「ほらこれ、」
そうして先のように一瞬で屋上に辿り着く。一応慌ててるらしく足も速いし挙動もいつもより慌ててる


会長少女は驚きながら見つめた後、ばきん、と爆弾を凍らせるだろう
「これでいいかな?」
「数字が消えた…やっぱマジもんだったのかな、」

中でショートしたらしく、時間の表示も消えたそれを二人は見つめながら

「いつ見つけたの?さっき?」
「うん、メシ食べようと思ったら見つけて。…良かったよ」

さしもの会長も、不安げというか、緊迫した表情を浮かべていた
常より眉間の皺が深かったキミドリもとりあえずは安堵した様子で、放っておいていた弁当を取る

「っぽいね。キミドリ氏さんきゅー!!」
ぶい!とありがとう!してから

「成る程ね。だーれの犯行かしら……」


と、思考している間に、きいん、と放送が響いた


「……?」
見上げると、少年の声――穏やかそうな、しかし陰気な声だった



「こんにちは、

どうぞ、このまま死んでください」



と、放送がかかった瞬間、どこかが爆発した


何も言わずに、放送室へと向かおうとする
「キミドリちゃん!!ごめん、来て!!」
一緒に来てくれと頼んで
もくもくと弁当を食べていたキミドリも、流石に緊迫した表情で居た
が、開口一番
「え、アタシあんまり面倒ごとは……」

「いいから来る!!」
と、氷の能力で彼女の首根っこを自分の片手とくっつけると、だっと走り出し引っ張っていく
「つめたッ!!やめてよ!!!分かったついてくから!!!!!痛い!!!!」
あまり乗り気ではないらしく仏頂面がさらに嫌そうに歪んでいたが、不憫そうな声あげながら引っ張られていく

「能力今日知ったし!!なんか使え……じゃなくて役に立ちそうだから!!」
さりげなく最低である
「もう、分かった、分かった…乱用しないでね?あと報酬なんか頂戴、どうせ江苗金持ちでしょ 違うの?」

「お察しの通りえびょーちゃんはロイヤルだけどね!!じゃあ大福一万円分あげ……と、放送室には誰もいないみたい」

放送室に着いたが、既に教師や生徒が混雑しているが、誰かがいた痕跡はないらしい

「……多分、他にも爆弾がしかけられてる気がするなぁ。ちょっと探しに行こうか」

「なんで大福」と微妙そうに突っ込んだあと

「手分けして探した方が良くない?」
やると決めたからには、先ほどと違い真面目な表情で

「江苗は爆弾ももちろんだけど犯人探してよ、アタシも一応探してみるけど――面倒はやだからそれっぽいやつ見つけたら教えるわ」

先ほど見せた能力の通り、彼女は学校の至る箇所を一瞬で移動出来る術を隠し持っている。学校を短時間で回るには都合の良い能力だろう
連絡は携帯でね、と告げれば駆け足で去って行く

はいさー!!と別れた後も元気のよい彼女だったが、むん、と考え込む様子になる
「事件が始まっちゃったのかしら……
友達の手を借りないといけないなぁ」
ぽつりとひとりごちると、まだ見えない犯人の影に、ううっ、寒々と背筋を冷やしていた



"――彼は、不幸せな人間だった"
"――彼は、幸福に至らなかった"
"――だからこそ彼は、全てを壊すことにした"



御劔江苗 by kimi.
16. 御劔江苗and赤紫キミドリ 了(20151006)
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