継舟留哉は、ちくわ丸から話を聞き、平原の思い出の公園に足を運んでいた。夕暮れ、素朴なベンチやブランコが朱色に彩られる景色を認め、
「………、」
留哉は、そこにいた相手を視認すると、少し微笑んだ
「………会えて良かった。邸螺さん」


ゆらり、と陽炎にも似たゆらめきを見せながら、人ではない彼女は微笑む
「おっそーい!!留哉さんがそんなに遅いなんて思わなかったなぁ!」
相変わらず理解に困るような、楽しそうなノリで笑いかけた
「こんにちは。謎は解けたかな?」
そうして、真理を突きつけるのだ

「……俺は探偵じゃないよ」

困ったように眉を下げる彼に、「そうだね!!」と楽しそうにあははと微笑んでいる彼女
「…ごめんな。もう少し俺の勘が良ければな」

星螺さんと、君の抱えているもの――
平原星螺が、"姉の平原邸螺"の仇として美弦萌百合を追っている事。そして、平原邸螺も、生身ではない人として、彼女を見守っていたこと――
それに、もっと早く気付けたのに、と。


しかし彼女はその回答に満足したように
「……ううん、実際美弦さんに殺された人間は多いもの。星螺ちゃんの問題に気付く方が難しいって」

気遣ってくれているのか。なおもあははと笑って話す彼女に、情け無さそうに眉を下げたまま、留哉は目を細めて

「…それで。君は、どうなんだ。……安心して成仏は、できそうか」

彼は博学だ。故に彼女がただの幽霊でないことは何となく察している。が、端から見ればそれが最も近しい存在であろう故に、そんな問い掛けをした。憂うような声色で。


——その言葉を、彼女は待っていたのかもしれない

"嗚呼、これで――"
「――そうだね。私の復讐はこれで終わり。気兼ね無く成仏出来そうだよ」
幽霊と定義するのならば、それで彼女は終わりなのだろう
そこで止まって、そこで続きは無くなるのだろう

「心残りを終わらせてくれて、ありがとう」

そうして、彼女は、ふわりと消えていく

「――、」
消えかける彼女に思わず手を伸ばす
「…、」

その姿が何故だか、自分の過去の想い人と重なったのか
酷く泣き出しそうな表情になりながら、口をつぐんだ

「………、俺は、救えたか。あんたと、星螺さんを……」

自分の存在意義を問うように、すがるようにも見えた



「――救えたよ、留哉さん」

にこりと、彼女は、


「貴方は、"もうひとつの正義"なんだから」


ゆっくりと、消えた
そこには、何も残らなかった

もうひとつの、正義――……

「……。ありがとう、な。平原、邸螺さん」
直ぐに涙の色は消え、屈託無い、前を見据えた表情に変わる
「俺は…"俺達"は、もっと救わないといけないな。あんた達みたいな人を――…」

このままではいけないと、彼女が消えた公園を視認しながら思考する。
そうして彼は、仲間の元へ向かい――何を語りかけるのか。




平原邸螺 by kimi.
継舟留哉 by jin.
14. 継舟留哉and平原邸螺 了(20150927)
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