ふうむ、と顎に手を当て、建物を見上げている男
レーム教会。一般人には広く悩みから救われると噂される場所
だが、正義組織"正"の長――祷は、不信感を抱き、教会への捜査を幹部に伝令した
この男は
「では行きましょう!!ええ、行くしかないです!!行かざるを得ませんね!!」
論佐理人である
忠告を受けると、は!!と気付いて「ああいや失礼」、と小声になった
如何にもな風体の彼女に、一瞬目を細めてから
「ここの教会のシスターさんですかな?」
と、問いかける
「実は以前から気になっていて」、といかにも入るための口実も付け加えた
きょろりと辺りを見渡した後に、眼鏡を上げながら適当な席に座る
隣に座した彼女に対して、軽く疑念を抱き問いかけた
「……今から何か始まるのですかな。私は仏教なもんで、こういった事には疎いんですよ」
成る程!!、と静かに叫んだ
「自分の道を、自分で示していく、そのためのお手伝いをするというのがこの教会のモットーなのですね!!素晴らしい!!真の助けは自主性を育む方法でのものとよく言います!!」
勢いはあるが小声で言っている
(ふうむ、見るからに怪しい点は……無いですね。何というか、ただの教会にも見えますが……)
ぼんやりと思考したのち、
(――いえ、やはり何か隠しているでしょうね)
無宗教の者まで聖書の一つも渡さずに受け入れるとは異端である、とも思える
「しかし、ここで救われている人間は数多くいらっしゃいます。その功績たる、方法のようなものを教えてくださらないのでしょうか」
それほど気の良い場所なのか、それとも——と。
聞いてから、頷いた
「ありがとうございます。……私も仕事柄人間関係の悩みも多いですからね、お世話になるやもしれませんな」
ははは、と微笑んだ
「では、そろそろおいとまします。……ああそうだ、最後に、」
と、彼女に向き直って
「この教会の代表者は居りますか?私、是非会ってお話を伺いたかったのですが……もしいらっしゃらないのであれば、お名前だけでもお伺いしたいのですが」
彼女の聖母めいた笑みに対し、問いかけた
殺されたと言った
――"アザナ"に
「……お悔やみ申し上げます。不謹慎でしたね……申し訳ございませんでした」
素直に謝罪すると、前の方へと向き直る
「実はですね、私はこの教会のような、誰かが救われる場所というのがーー正直、信じられませんでした」
ぽつりと、彼女の作られた笑顔を見ないとでも言うように
「今も、それは思っています。救う側の筈の人間すら救うということを忘れたこの世界など、希望も無いとーーしかし、」
「――いっそ、"あなた"のような人が、誰かを救うことが出来るのでしょうね」
「……失礼しました」
立ち上がると、そのまま立ち去ろうとする
「……重ね重ね、ありがとうございます」
ふ、とようやく落ち着いた様子で微笑みかけ、
「私は……そうですね、論佐理人と申します」
彼を入り口まで見送り、彼もまた彼女へ軽く会釈した後——互いに、離れた
「………。あの人。私と一緒……」
ぽつり、と呟いた言葉は、彼女以外には聞こえない
レーム教会。一般人には広く悩みから救われると噂される場所
だが、正義組織"正"の長――祷は、不信感を抱き、教会への捜査を幹部に伝令した
この男は
「では行きましょう!!ええ、行くしかないです!!行かざるを得ませんね!!」
論佐理人である
「あの、」
と声をかけるシスター。しい、と唇の前に人差し指を当てて、
「お静かに。」
そう穏やかに忠告するシスターは、微笑んで赤い瞳を細める、エクリチュールだった
と声をかけるシスター。しい、と唇の前に人差し指を当てて、
「お静かに。」
そう穏やかに忠告するシスターは、微笑んで赤い瞳を細める、エクリチュールだった
忠告を受けると、は!!と気付いて「ああいや失礼」、と小声になった
如何にもな風体の彼女に、一瞬目を細めてから
「ここの教会のシスターさんですかな?」
と、問いかける
「実は以前から気になっていて」、といかにも入るための口実も付け加えた
「そうでしたか!どうぞお入りください。お気の済むまでごゆっくりなさってくださいね」
微笑み浮かべて扉をゆっくり開き、先に入るよう示してくれる
よくある、小さめの教会。ちらほら、数人の人が座っている
「……、」
にこ、と会釈すると、相手が座りやすいように、先に席に着く
微笑み浮かべて扉をゆっくり開き、先に入るよう示してくれる
よくある、小さめの教会。ちらほら、数人の人が座っている
「……、」
にこ、と会釈すると、相手が座りやすいように、先に席に着く
きょろりと辺りを見渡した後に、眼鏡を上げながら適当な席に座る
隣に座した彼女に対して、軽く疑念を抱き問いかけた
「……今から何か始まるのですかな。私は仏教なもんで、こういった事には疎いんですよ」
「………何も始まりませんわ、」
目を伏せて微笑みを浮かべて言う。
「皆さんの道は、皆さん次第ですもの。私達が示すことは、致しません。――皆さんがどこへ行きたいかを、共に考えるお手伝いをするだけです」
安心させるように穏やかな表情でそちらを向いて、
「この教会が皆さんの安らげる場所でありたい……それのみです」
流れる音色、荘厳な装飾
心を落ち着かせられる場所
目を伏せて微笑みを浮かべて言う。
「皆さんの道は、皆さん次第ですもの。私達が示すことは、致しません。――皆さんがどこへ行きたいかを、共に考えるお手伝いをするだけです」
安心させるように穏やかな表情でそちらを向いて、
「この教会が皆さんの安らげる場所でありたい……それのみです」
流れる音色、荘厳な装飾
心を落ち着かせられる場所
成る程!!、と静かに叫んだ
「自分の道を、自分で示していく、そのためのお手伝いをするというのがこの教会のモットーなのですね!!素晴らしい!!真の助けは自主性を育む方法でのものとよく言います!!」
勢いはあるが小声で言っている
(ふうむ、見るからに怪しい点は……無いですね。何というか、ただの教会にも見えますが……)
ぼんやりと思考したのち、
(――いえ、やはり何か隠しているでしょうね)
無宗教の者まで聖書の一つも渡さずに受け入れるとは異端である、とも思える
「しかし、ここで救われている人間は数多くいらっしゃいます。その功績たる、方法のようなものを教えてくださらないのでしょうか」
それほど気の良い場所なのか、それとも——と。
「……方法、ですか……そんなものありませんよ」
少し寂しそうに笑んでる
「むしろ…聖書の読み上げや説教などは他の教会より少ないです。何もしていない、に近いかもかもしれません」
答え、優しい笑みを浮かべて
「……でも、悲しんでいる人、苦しい思いを抱えている人が居たら、そばにいて、話を聞いてあげたい……それが、私達にできることですから…
………貴方も、良ければいつでもいらしてください。何かあっても、なくても。」
首を傾げ、そう微笑みかけて
少し寂しそうに笑んでる
「むしろ…聖書の読み上げや説教などは他の教会より少ないです。何もしていない、に近いかもかもしれません」
答え、優しい笑みを浮かべて
「……でも、悲しんでいる人、苦しい思いを抱えている人が居たら、そばにいて、話を聞いてあげたい……それが、私達にできることですから…
………貴方も、良ければいつでもいらしてください。何かあっても、なくても。」
首を傾げ、そう微笑みかけて
聞いてから、頷いた
「ありがとうございます。……私も仕事柄人間関係の悩みも多いですからね、お世話になるやもしれませんな」
ははは、と微笑んだ
「では、そろそろおいとまします。……ああそうだ、最後に、」
と、彼女に向き直って
「この教会の代表者は居りますか?私、是非会ってお話を伺いたかったのですが……もしいらっしゃらないのであれば、お名前だけでもお伺いしたいのですが」
彼女の聖母めいた笑みに対し、問いかけた
代表者――。その言葉を聞き、僅かに狼狽した表情を見せる。少し下を向き、言葉に迷い――
「……、いませんわ」
ぽつり、と震える声で伝える
「殺されました。"アザナ"に」
視線を外し、自分の愚かしいを見せないようにと言わんばかりに、出来る限り冷静に声にする
この場所で自分が感情を曝け出すことはしない、してはいけない、という雰囲気
少しだけ、沈黙。
「…それで…力が及ばないかもしれませんが、この教会の責任者は現在、私、ということになっています。……何かご用があったのですか?」
次に顔を上げ目を合わせる時は、普段のような笑顔をつくっていた。相手に不安感を与えないようにと、その気持ちが伝わって来る
「……、いませんわ」
ぽつり、と震える声で伝える
「殺されました。"アザナ"に」
視線を外し、自分の愚かしいを見せないようにと言わんばかりに、出来る限り冷静に声にする
この場所で自分が感情を曝け出すことはしない、してはいけない、という雰囲気
少しだけ、沈黙。
「…それで…力が及ばないかもしれませんが、この教会の責任者は現在、私、ということになっています。……何かご用があったのですか?」
次に顔を上げ目を合わせる時は、普段のような笑顔をつくっていた。相手に不安感を与えないようにと、その気持ちが伝わって来る
殺されたと言った
――"アザナ"に
「……お悔やみ申し上げます。不謹慎でしたね……申し訳ございませんでした」
素直に謝罪すると、前の方へと向き直る
「実はですね、私はこの教会のような、誰かが救われる場所というのがーー正直、信じられませんでした」
ぽつりと、彼女の作られた笑顔を見ないとでも言うように
「今も、それは思っています。救う側の筈の人間すら救うということを忘れたこの世界など、希望も無いとーーしかし、」
「………」
彼の言葉を、黙って聞き入れる。同調するように頷き、相手が話しやすいように
その、癖のような優しさが、少しだけまばたいて止まった
彼の言葉を、黙って聞き入れる。同調するように頷き、相手が話しやすいように
その、癖のような優しさが、少しだけまばたいて止まった
「――いっそ、"あなた"のような人が、誰かを救うことが出来るのでしょうね」
小さく見上げる。赤い瞳は、酷く綺麗に彼を見つめた
「……失礼しました」
立ち上がると、そのまま立ち去ろうとする
気が取られるようなそれから、はっと他者へ向ける、笑んだ表情に変わる
「…お辛くなりましたらぜひ此処へ。お好きなだけ、お好きなように過ごしてください。――もし、誰かに聞いて欲しい気持ちがあれば、私でよければ、貴方が望むだけ、おそばに居ます」
微笑めば、退出しようとする彼を送り出そうと自分も立ち上がり
「貴方とお知り合いになれてよかったですわ。私はエクリチュールと申します。ご縁がありましたら、また」
「…お辛くなりましたらぜひ此処へ。お好きなだけ、お好きなように過ごしてください。――もし、誰かに聞いて欲しい気持ちがあれば、私でよければ、貴方が望むだけ、おそばに居ます」
微笑めば、退出しようとする彼を送り出そうと自分も立ち上がり
「貴方とお知り合いになれてよかったですわ。私はエクリチュールと申します。ご縁がありましたら、また」
「……重ね重ね、ありがとうございます」
ふ、とようやく落ち着いた様子で微笑みかけ、
「私は……そうですね、論佐理人と申します」
「論佐さん。……あなたに神のご加護があらんことを」
いつものように、穏やかな表情で微笑む
いつものように、穏やかな表情で微笑む
彼を入り口まで見送り、彼もまた彼女へ軽く会釈した後——互いに、離れた
「………。あの人。私と一緒……」
ぽつり、と呟いた言葉は、彼女以外には聞こえない
「――収穫はありませんでしたね」
離れたのち、一人呟いたそれは、ひどく事務的なものだった
彼女の献身的な様子も露知らず、とでも言うような
さりとて、先程の少しばかりの本心は、一体どのように説明するのか
エクリチュール by jin.
論佐理人 by kimi.05. 論佐理人andエクリチュール 了(20150819)
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