プレートに「相原あまも」と書かれている病院の一室

首や肩に包帯を巻き、患者服を着ている彼女は――もうすぐ退院だ。見舞いに来た友人を見上げ、眉を下げながら微笑む
「ありがとう…マエリ」
花を交換していた糸目の女性は、途中からウェーブのかかっている桃色の長髪を揺らしながら振り向き、笑い返した
「花屋の方は大丈夫ですから。無理に早く復帰しようとしなくて良いですからね?」
――マエリという女性は花屋の同僚らしい
あまもは彼女に対して随分心を許している様子だ


その時、病室の向こう側から「静かにしてください!!」と看護師が怒る声が聞こえてきた
「分かった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その声が聞こえると、あまもははっとした顔になる

一ミリも理解してないように見えて理解してる気はするが努力を感じない返答
彼女であれば聞き覚えがあるだろうそれは、やがて彼女の病室のドアを叩いた
「――失礼します!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
入ったのは、蛍火ほたる
ポピーの花束を抱えた青年だった
「あ、相原さん!!!!!!!!!!!!!!!具合は大丈夫か!!!!!!!!!!!!!!!あれから!!!!!!!!!!!!!!!」

「…蛍火さん」
彼の姿を見ると、心から嬉しそうに目を細めた笑みを浮かべた

マエリも彼の事はあまもから聞いて知っていたが――、予想以上の声の大きさにぎゅっと目を瞑っていたが、彼女も笑みを部屋を訪れた彼に向けて会釈
「…こんにちは、蛍火さん。いつもお店をごひいきにして下さってありがとうございます。それと――私の大切な友達も助けて頂いて」
あまもの前で、マエリは頭を下げた


「――いや、世話になったのは俺の方だ!!!!!!!!!しかも相原さんのことを護れなかった!!!!!!!由々しき事態だ!!!!!!!!」
ば、とその場に伏せると、土下座する
そもそも民間人を護る役目の筈が助けられず、危機に陥らせた
しかもそれが、いつも優しくしてもらってる女性ともなると
「……すまない……!」


「ほ、蛍火さん…!」
土下座した彼を見てあまもは少しおろおろし、身を乗り出しかける
「わ、私はっ、蛍火さんが来てくれなかったら本当に殺されていたんですっ…!!だから、そんなこと、しないで…!!!!」
泣きそうになりながら、マエリ越しに訴える
マエリも言葉に迷い少し沈黙していたが、あまもの言葉を聞くと、膝を折って彼の肩に手を当てる
「……私もあまもさんも、蛍火さんに本当に感謝しています…。本当に、どれだけ感謝しても足りないくらいなんです。…それなのに謝罪なんて…、」



ぐ、と泣きそうになるのを堪えて床を額に擦り付ける
「あんまり謝ると迷惑になっちまうから!!!!!!!だけど、本当は、ずっと謝っていたいくらいなんだ!!!!!!!!!」
そこでようやくがば、と顔を上げて
「……ありがとうございます!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
また深々と土下座していた
彼女に歩み寄ると、花束をあげるだろう
「これ、相原さんとこで買った花束で……相原さんが居ない間、他の所を見て回ったんだけどやっぱ違うんだ!!!!!!!相原さんとこじゃなきゃ、俺は花は買わない!!!!!!!」
「――!」
ずい、と花束を渡され、彼の言葉に感激で震えた

「俺は……俺は考えた!!!!!!!!謝っても謝っても足りないくらいだが、俺が、唯一出来る礼を!!!!!!!!」
「一緒に買い物してくれ!!!!!!!!仕事する相原さんしか俺は見ていない!!!!!!!!だから俺の金で羽を伸ばしてくれ!!!!!!!!」
えっ

「…え」
言われた言葉と迫った彼の顔に遅れてぼっと赤面すると、口をわやわや
「そ、そ、そんなの、だめですっ…!!蛍火さんのお金だなんてわ、私、ちゃんと自分のお金使いますようっっ…!!!!!」
おろおろ狼狽目ぐるぐるあわあわ


「そんな事は!!!!!!!!!!!!!!!!!だめだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ずい、ずい、顔が近い
「俺はお詫びしたいんだ!!!!!!!!!!!!!!!!」
ずいいいいい!!!!!ギャグ的表現に顔がもはや至近距離である
「そうするんだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ふぇっ?!!あ う ??!!!!?!」
大混乱
「わっ分かりましてゃっ!!!!わかりましたからぁぁあぁあっ!!!!!」
顔を真っ赤にさせながら、どんっ!!と思わず押し返した


はっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!とそこで蛍火ほたるも顔をぼぼっと真っ赤にした
「悪い!!!!!!!!すまない!!!!!!!!すまない!!!!!!!!!!!!!!!!」
ぺこぺこしていたが、むんと眉毛をしかめて叫ぶ
「じゃあ今度の水曜日に会おう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!駅前で待っている!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そうして嵐のような男は、びゅーっと走り去ったのだった


はわ…と唖然としている花屋の店員2人

「……なんか、思ってたより激しい人でしたね」
「…蛍火さんは、言葉では説明しきれないから……でも…優しい人でしょ……?」
「ええ。……良かったわね、デートですよ?」

「………え………?……あ」


いっぱいいっぱいだったために遅れて自覚した彼女は、にこにこ顔のマエリに応える余裕も無いままベッドに倒れ込む

「あらあら、うふふ」
微笑ましいと言いたげに笑うと、よしよしと彼女の頭を撫でてやっていた




蛍火ほたる by kimi.
相原あまも、壱護マエリ by jin.

41. 蛍火ほたる&相原あまも(20160202)
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