「…………はあーーー、」

どでかい白い溜め息をつく、羽織っていただけのどでかい白パーカーを今はしっかり着用している男

「腹減ったなあ…………………」

ピストルを失った後、アジトにも戻らず戦いを放棄、逃げている内にGODは解体
昼間はスーパーの試食で腹を満たし追い出され、公園にぼんやり座ってると集まって来た子供達と遊んでいれば親御さんに不審者と通報されかけ、と惨めたらしい扱いを受け、

つまりは、路頭に迷っていた

「………ネカフェ行くかなあ………」

寝泊まりする場所も職場にあっただけに、それしか道はなかった
冬の冷気に顔を冷たくしながら夜道を歩いていく



「んお?」
真っ赤な顔でほげにゃんふわふわパーカーに身を包んだ女子高生が居た

学校帰りなのか、下はセーラー服である
「……げげっ!出たな悪党!脱獄したなっ!」

ささ、と武術の構えを取り、あちょ~~と虎の構えまで見せている そう、御劔江苗だった

「あ……めちゃモテ愛され大和撫子のバカわいいお嬢ちゃんじゃねえか」
自分に半殺しにさせられたのに、何でそうバカっぽくいられるんだと思いながら
両手を緩くあげて戦う意志がないことを示す
「オレはそもそも捕まっちゃいねえ。結局一度だって人殺しはしてないし、……許してはもらえないか?」
僅かに眉を下げ、初対面時より消沈気味に話す


「……」
きょとんと見つめてたけど、すっと構えを解いた
「そうなの。……ごめんなさい。てかそれは言わないで!!」
ぺこり、頭を下げる
だが彼の呼び名にぷんと怒り始めた
「私は御劔江苗なの!!次そういう風に呼んだら……って、おじさんはこんな所で何してるの?」
ほげにゃんマフラーで半分うまった顔が瞳をパチパチさせていた


「……素直だなあ…大丈夫か」
――とても、「はいそうですか」と頷けるような言い分では無かったはずだが。警戒心の薄い彼女にぽつりと心配げな声を漏らしてた
「御劔……。…なんて呼べばいい、江苗ちゃん、か?」
また以前のような薄ら笑いを浮かべながら
「ネカフェに行く途中だよ。職を失ったんだから次の職場を探さねえとなあってな」
ひらひら手を振って踵を返した



ぱちくり
ぱちくり
ぱちくり
三回ほどまばたきしてから、頭の上に電球が浮かび上がった
「レディースアンドジェントルメッ!!!!!」
ほぁ!!と両腕を挙げる
ちょっとだけ暗くなってきた道、街頭が彼女を照らしている
「来なさい!!江苗ちゃんはロイヤルなの!」
「!!?!?」

わっしと両腕を掴むと、どこかしらに電話し始めるだろう
「もしもしパパ?執事一人雇ってもいい?」
すると秒で黒いリムジンが現れ、二人をわあわあと乗せわあわあと館に着いた
あほほどでかい館が現れた
大人の事情もろもろ、ここまで有無を言わさない展開だった
「!!?!? ?!?!??!!!」

「みんなただいまー!!!ねえ、御傷くーん」
運動場くらいのあほほどでかいホールに着くと、執事とかメイドとかが「お帰りなさいませ」とずらーっと頭を下げてる
その中で一緒に頭下げてた執事が顔上げると、
「先輩のお仕事して!!」
「え?どういうこと?」
白髪の少年が、無表情でぽかんと見てた

「ま、待てや!!!!!」
連れてかれた男狼狽した様子で慌てる
「し、執事だあ?!!待て待て待て!!!!何勝手に決めてんだ!!!!!」
しかも自分を倒した少年が目の前に居るし
「おまッ、――、オレが何で新約説に入ってたか少しは考えてみろ!!!」
慌てから怒りへと段々シフトしていく声色
「アザナが嫌いだからに決まってんだろうが!!――そのオレがっ、アザナのお前のためにはい働きますって直ぐ頷くと思うか?!!」
苛ついたように手をかざしながら


「ほぁ!」
その通りだろ……というちょっと呆れた顔の御傷をよそに、ほぁ!とした顔の江苗
「でもお仕事ないんでしょ?」
いやそういう問題では

「だったら私の寝首を掻けばいいじゃない!私からしたら、目の前で路頭に迷われるよりマシだよ!」

マフラーを解きながら、鼻息をふんすとして笑いかけた
もはや彼女からしたら、無理矢理働かせる気満々のようである
ちらり、と御傷だけが彼を心配そうに見る

「、……、 、」
言葉を失って
「お前、おまえほんと、ほんと馬鹿だよな!!!ッ、――!!!」
苛ついたままに、
しかしその苛つきは彼女ではなく、自分へと対象が移り変わったらしく、どこへ向ければ良いか分からない感情に迷い、片足がダンッと地団駄を踏んだ
「………、……」
「…分かった」
大人げない姿をそこで終わらせ、はぁ、と呆れるようないつもの彼に戻り
「働かせてくれ。ただし嫌になったら勝手にばっくれるからなあ」
職を提供してくれたというのに、諦めたような瞳で彼女を見た



「ん、わかった!! あとは御傷君が教えてくれるから!!」
ひらひらと手を降り、メイドに今日の夕御飯のメニューを聞きながら自室に向かったらしい
執事もメイドも、和やかに自分の持ち場に着いていく
「……、」
押し黙ってたけど、彼にこっち、と促し始める
「……住み込みの寮がある。あと執事服は貸し出しで揃ってるから……」
色々と案内をしている最中、ぽつりと問いかける
「……大変だね。色々……」
なんというか、心中察していた
返事は待たず、また新たなものを教えていた

「……け」
小さく悪態を付いていた
新しい職場を把握しながら、いつでもばっくれられるように道覚えとかねえとな、などと考えていた




御劔江苗、縫手御傷 by kimi.
ファンドランド by jin.

42. 御劔江苗&ファンドランド(20160203)
スポンサードリンク


この広告は一定期間更新がない場合に表示されます。
コンテンツの更新が行われると非表示に戻ります。
また、プレミアムユーザーになると常に非表示になります。